見せ方で「いいデザイン」の意味は変わる

マーケティングについての本を読んでいて気になったのでメモ。

読んだ本はコレ。
マーケティング関係の本を探していて、「ケースで学ぶ市場志向の組織と戦略」と書かれたオビに惹かれて手に取った。

マーケティング優良企業の条件―創造的適応への挑戦

マーケティング優良企業の条件―創造的適応への挑戦

花王アスクルユニチャームなどを例に、マーケティング視点での事業の捉え方と展開が書かれております。それぞれの場合の概要を知れたのは良かったのだが、ケースというには内容が物足りなかった。*1

で、気になったのというのはアスクルについての章で書かれていた、エステー化学と共同開発したトイレの消臭剤の話。
トイレの消臭剤といえば、大概のモノはなんで?と思うくらい不自然にケバケバしい外装をしとるわけです。んでアスクルに「もっとデザインのいい消臭剤が欲しい」という要望がくる。デザインがいいというか、トイレに置いておいて不自然でないモノということですね。そこでエステーにいい感じのデザインの消臭剤を作ってもらってアスクルで売ったところ良く売れたと。
おもしろいのはこのデザイン性についての要望はエステー側ももともと認識していて、自社単独で製品化もしたのだが結局売り上げには繋がらなかったこと。いざデザイン性を考慮した消臭剤を商品棚に置いてみたら、まったく買ってもらえなかったわけです。
これ、マーケティング的には流通経路のどの範囲に最適化させるのかとか、店舗販売では商品棚で目立つことが一番強力なファクターだという話だと思うのだが、この消費者行動がすごくおもしろい。見た目が強烈すぎる、もっといいデザインのものが欲しいというのはたぶん少なくない人が、割と明確に自覚してると思うのです。にもかかわらず、実際にスーパーとかにいってズラーと消臭剤が並んだ商品棚の前に立つと、結局目立っているヤツを手に取る。*2
店舗販売とカタログ・ウェブ販売の接点の違いとか最適化範囲の違いというよりかは、多量に並んでいるか1コだけ並んでいるかということなんだと思う。
L判で印刷したときは普通だった写真がA3で印刷したら急に良く見えたとか、あるいはその逆でカタログとかポストカードでは良く見えたのに実物を見たらイマイチだったとか、よくある。理由は人間の視覚特性で、大きさによって感じ方、特に色の感じ方が違うこと、同じ色でも大きい方が明るく感じられる。だから、デザイナーは色見本じゃなくて実物で必ずチェックしますね。それと、1コだけではたいしたことないものでも、とりあえず大量に並べてみると何故かそれっぽく見えてしまうという点も見逃せない。
たぶんでしかないけど、例えばウェブでもズラーと横一列に20、30コが並んでるみたいな写真を使えばやっぱり目立つデザインのものが売れるし、店舗販売でもサンプルを1コだけ置いておいて欲しいモノを店員にいうみたいなシステムにすれば「いいデザイン」のものが売れるのではなかろうか。そもそも実際に使うときには1コだけ置かれてる状態がほとんどなわけで、商品棚とかで大量に並んだ「例外的な」状態で売ろうとしてた、売らなければならなかったことがエステーの抱えてた本質的な問題だったのではないかと。

*1:適宜データが添えられてないとか、なんか説明が足りない気がするとか、気になった

*2:で、実際に使うと目立ち過ぎとか思う